先日、茨城県近代美術館で見た竹内栖鳳「猛虎図」がとてもよかったので、どうしても栖鳳の他の作品も見たくなって、山種美術館に行って来ました。
入口正面に「班描」。ちょっと、正直に言うと、入口の人の出入りがある場所に飾ってあったので、集中して見れなかった。もっと落ち着いて見たかったんだけど…。
この絵を最初に見たのはネットの画像で、その時の方がいろいろ感じとることができたかもしれない。
第一印象は、猫じゃなくて、美少女だと思った。少女から女性に成長していく途中の。栖鳳がこの少女をとても大事に思っているように感じた。幼い子供のやわらかいくにゃっとした体つきや、やわらかい肌触り。やっぱり、栖鳳の絵には猛虎図と同じように感触を感じる。
実物を見た時には第一印象のような人間的なものは感じず、猫でした。実物より印象に残ったのが、横に飾ってあったモデルとなった猫の写真。顔が横に広くて目が大きくて確かにかわいい猫だけど、絵の猫と全然似てない…。
帰ってから「班描」について調べていたら、この猫はもとは沼津の八百屋さんの飼い猫で、散歩の途中でこの猫が荷車の上で寝そべっていたのを見て、『徽宗の猫だ』と思って絵を描きたくなったのだそうです。とりあえずその場でスケッチしたけど、夜宿に帰ってからも猫のことが忘れられず、なんとか頼みこんで絵1枚と交換してもらい、自宅に連れて帰ったのだとか。『徽宗』は中国の宋の時代の皇帝で、芸術に没頭しすぎて国が滅んだという方。徽宗の猫の絵は化け猫みたいです。
でも、よく見ていたら、モデルの猫の左目は瞳孔が小さい点みたいで徽宗の猫の目に似ている。右目は物思いに沈んだような上目づかいで栖鳳の猫の目に似ている。やっぱりモデルの猫は、どっちの絵にも似ていたのかも。
この猫は絵を描きあげた後栖鳳が東京に行っている間にどこかへ行ってしまったそうです。なんとも不思議な猫。
下が徽宗の猫とモデルの猫。