土浦市立博物館土浦藩土屋家刀剣の向かい側には、雛人形が3組展示されていました。江戸時代の雛人形です。

髪をすっきりとアップしたお雛様。冠が煌びやか。

“文化の中心が次第に上方から江戸へと移った江戸時代後期、それまで雛人形制作の中心地であった京都に代わって江戸でも制作が盛んになり、江戸オリジナルの雛人形が生み出されました。それが古今雛とよばれるもので、二代目原舟月(1767?~1844)によって大成されました。わたしたちが目している現代の雛人形の多くは、この古今雛の流れをくんでいます。古今雛の特徴は、玉眼とよばれるガラスをはめた目や、浮世絵に描かれたような江戸美人風に仕立てられた写実的な顔立ちです。雛人形に玉眼を入れる技法を取り入れたのも二代目原舟月といわれ、山車だし人形の技術を応用したとされます。また、衣はそれまでの有職によらない装飾性に富むものとなりました。
当館の古今雛を調査していただいた是澤博昭さん(大妻女子大学)によると、写真の雛人形も典型的な江戸製のものだそうです。女雛の冠には白色を中心とした飾りがさげられていますが、これも当時の江戸雛に多くみられる江戸好みのすっきりとした色使いとのことです。江戸では原則8 寸(約24cm)以上の高さの人形をつくることは禁止されていましたが、当館所蔵のものは像高が約30 ㎝もあるやや大きなものです。また、胴部の素材は既製品に多くみられるような藁ではなく木製であることからも、オーダーメードの高級品であったと考えられます。このような古今雛は主に江戸の上層商人が購入したようです。残念ながら当館の古今雛の詳しい来歴は不明ですが、江戸とのつながりを有する土浦城下の商家が発注してつくらせたのかもしれません。”(土浦市立博物館だより「霞」より転載)